健康診断で心電図の異常を指摘された
健康診断で心電図の異常を指摘された

健康診断で行われる心電図検査は、心臓の電気的な活動を波形として記録するもので、不整脈や心筋虚血、心肥大などを早期に発見するために非常に有用です。健診の場で「心電図に異常があります」と言われると不安になりますが、必ずしも重篤な病気があるとは限りません。
例えば、一時的な自律神経の影響や体調、睡眠不足、検査時の緊張でも波形に変化が現れることがあります。そのため、「異常」と指摘されても再検査で問題がないケースも少なくはありません。
しかしながら、心電図異常が持続的に存在している場合や、特定の異常波形が見られる場合には、心臓の病気が背景にあることもあり、注意が必要です。特に、狭心症や心筋梗塞、不整脈、心筋症などは自覚症状が乏しいこともあるため、健診での指摘が病気発見のきっかけとなることがあります。
心臓の拍動リズムが乱れる状態で、心電図異常として最も多く見つかるものの一つです。
脈が一拍飛ぶ、強く打つといった感覚で自覚されることもありますが、健診で偶然見つかる場合もあります。基本的に良性のことが多いですが、頻発する場合や心筋症などの基礎疾患を背景に持つ場合は注意が必要です。
脈が不規則に打つ不整脈で、脳梗塞や心不全の原因となります。高齢者に多くみられ、症状が軽くても抗凝固療法を含めた治療が必要となります。カテーテル治療で根治できることが多いためご相談ください。
脈が極端に遅くなるタイプの不整脈で、めまいや失神を伴うことがあります。重症例ではペースメーカー植込みが必要です。
心臓を栄養する冠動脈が動脈硬化により狭くなったり詰まったりすることで、心筋への血流が不足する病気です。心電図ではST変化、異常Q波、T波の変化などがみられます。健診での異常は、過去に気づかないうちに心筋梗塞を起こしていた痕跡を示すこともあります。糖尿病や高血圧、喫煙歴のある方は特に注意が必要です。
心電図で高電位差や伝導異常がみられる場合、心臓の筋肉が厚くなっていることを示唆します。
長年の高血圧により左心室が厚くなる状態です。
遺伝的素因により心筋が異常に肥大する病気で、若年者の突然死の原因となることもあります。
心臓が拡張し、収縮力が低下する病気で、心不全や重症不整脈につながります。
心電図でQT延長やBrugada型波形がみられる場合は、遺伝的な不整脈症候群が疑われます。これらは突然死のリスクがあり、専門医による評価が必須です。また、カリウムやカルシウムなどの電解質異常でも心電図に変化が現れるため、血液検査による確認が必要です。
心電図で異常を指摘された場合、異常の種類や背景によって行う検査は異なりますが、以下のような手順で原因を探っていきます。
再検査(心電図の再施行)
一過性か持続性かを確認します。
ホルター心電図(24時間心電図)
日常生活での一過性不整脈や虚血性変化を記録します。
心エコー検査
心臓の大きさ、弁の状態、心筋の動きを確認し、心肥大や心筋症の有無を評価します。
運動負荷試験(マスター運動負荷・トレッドミル・エルゴメーター)
運動時の虚血や不整脈の出現を確認します。
血液検査
心筋障害マーカー、電解質、甲状腺ホルモンなどを測定します。
冠動脈CTや心臓カテーテル検査
虚血性心疾患が強く疑われる場合に行います。
健康診断で心電図異常を指摘されると、多くの方は強い不安を抱かれます。しかし、心電図異常は必ずしも重大な心疾患を意味するわけではなく、再検査で問題がないケースも少なくありません。
一方で、動悸・胸痛・息切れ・めまい・失神などの症状を伴う場合や、虚血性心疾患や不整脈が疑われる所見がある場合は、放置せずに循環器内科での精密検査を受けることが重要です。特に心房細動や虚血性心疾患は、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な合併症の予防に直結するため、早期発見・早期治療が極めて重要です。
健診での「心電図異常」は、心臓の健康状態を見直す良い機会ともいえます。生活習慣の改善(喫煙・減塩・適度な運動・体重管理)と合わせ、必要に応じて専門医の診察を受け、将来の大きな病気を予防することにつなげましょう。
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